180年ほど前、スペインの植民地支配下にあったベネズエラでは、現地民のインディオやアフリカ黒人奴隷がコーヒー・ココアの栽培や金の採掘といった労務に酷使されていました。これを見て立ち上がったのが、のちにコロンビア大統領となったシモン・ボリバルです。
ボリバルは、コロンビア独立軍を率いて戦い、ベネズエラ独立へのきっかけを作りました。1820年代のことでした。この戦いのさなか、ベネズエラ・オリノコ川流域にあるアンゴスチュラの町にあった英国陸軍病院でアンゴスチュラ・ビターズは生まれました。この病院において、ベネズエラ解放軍の軍医として従軍していたドイツ人医師J・シーガート博士が食欲不振・胃の疾患を訴える兵が多いのを見て、1824年にある薬用酒を考案しました。これがアンゴスチュラ・ビターズです。このアンゴスチュラ・ビターズはジェンシアン(りんどう属)を主体に、シナモン・キナ皮・アンジェリカ・コリアンダー・アーモンド・ナツメグ・カルダモンなど各種薬草と香辛料をラム酒に浸漬して作ります。健胃・強壮・解熱の薬効があり、西インド諸島ではマラリアの予防薬として用いている所もあります。また現在でもBarなどでは胃薬的な扱いをしている所もあります。現在は、ベネズエラの政情不安のため、アンゴスチュラ(のちに英雄の名をとってシウダド・ボリバル市と改称)からトリニダードトバゴに移り、生産しています。最近飲み過ぎたというお方は、ジントニックなどに数滴アンゴスチュラ・ビターズを入れて飲んでみたらいかがでしょう。風味もまし、調子もよくなること請け合いです。マンハッタンもいいですよ。