東北の酒蔵にしんしんと雪が降る中でしぼられたお酒のイメージで雪しぼりと名付けられたのは有名な発酵学者小泉武夫先生です。かっては伝統的な生もと造りのお酒は十分な熟成が必須で、しぼりたてを原酒で飲むなど考えられませんでした。しかし、大七酒造は技術力でその壁を破りました。雪しぼり・本醸造生原酒は、冬季限定の新酒ながらも練り上げられた密度の濃さに、生もとならではの風格を感じます。10度前後に冷やしても、氷を入れてオンザロックでも、魚介料理とくに、新鮮な刺身や、シーフードサラダ、生牡蠣などに大変合います。なお、生原酒を冷蔵庫で数か月間冷蔵貯蔵しますと、より豊潤さ、甘やかさが増し、肉料理などにも合うようになります。雪しぼり・本醸造にごり酒は、たいていにごり酒は濃厚な甘口ですが、薄にごりの爽やかに造られています。このにごり酒は、瓶詰めして瓶内で二次発酵させ、適度な微発泡性にし熱殺菌して品質を安定させています。そのため、シャンパンのような感じもあり、優しい涼しげな香りと、果実のような上質な甘みがきれいに広がり、ピリッとした炭酸ガスが爽やかさを醸し出す新感覚のユニークな日本酒です。8度前後までしっかり冷やして、メロン・桃・洋ナシなどのフルーツ、生ハムとメロン、菜の花・セリのおひたし、タラの芽の天ぷらなどと相性がぴったりです。
山形県の有名地酒酒造会社に出羽桜酒造があります。地酒は、その土地の酒の意味ですが、江戸時代に伏見(京都)、灘(兵庫)、西條(広島)が三大銘醸地であったため、それ以外の場所で造られたお酒を地酒と呼び、少し格の低いものとして扱われていました。しかし、昭和の終わりに地酒ブームが起こり、地酒が一気に注目されるようになりました。そして、吟醸部門では出羽桜酒造、普通酒部門では朝日酒造(新潟県で、久保田が代表的)が人気を独占していました。この出羽桜酒造では桜花吟醸酒が代表的ですが、吟醸酒以外のお酒も月山や最上川を背景にして造られるせいか、杜氏さんが優秀なせいか、どれも一つ一つに個性があり、違った味わいが楽しめます。大概の蔵元のお酒はどうしてもその蔵元の味わいがあり、種類の違ったお酒を造ってもどこかに独自の味わいが出るのですが、出羽桜酒造にはそれが大変少ないのです。今回ご紹介するのは、特別純米酒一耕です。米と米麹だけを使用原料とし、60%以下の精米をし、特別な製造方法をとって特別純米酒を生産しています。一は始まり、耕すは米の文化、つまり大地の温もりが感じられるやわらかな味わいを感じられる純米酒として名付けられました。日本酒度+3、アルコール度15.5度、精米歩合55%とバランスがとれた、美味しいお酒です。冷やからお燗まで楽しめます。
更新日時 : 2016年01月24日
カテゴリ : 日本のお酒