醸造酒は果物や穀物をそのまま、または糖化させたあと、酵母の働きによりアルコールを発酵させたお酒です。蒸留酒は醸造酒を加熱し、その蒸気を冷やして液体に戻したお酒です。この蒸留の過程で、醸造酒がアルコール度数5度から15度程度ですが、蒸留酒のアルコール度数は40度から60度にもなります。醸造酒は、そのまま発酵させているため、素材や製造過程の環境によって、雑味が混じることになりますが、その雑味を上手に転嫁し旨味に変えることが生産者の技術になります。蒸留酒は蒸留のため、醸造酒の旨味が消えていくことになります。そこで、生産者はその旨味をいかに残すかが、生産者の技術になります。醸造酒は果物や穀物を発酵させることができればお酒になりますので、果物や穀物を貯蔵し始めたときからお酒が生まれたと思われます。蒸留酒は、蒸留器が必要ですから、どうしても醸造酒以後になります。蒸留技術の起源は紀元前4000年~3000年のメソポタミア文明にまで遡ります。しかしメソポタミアではこの技術は香水を作るために使われておりお酒の精製には使われていませんでした。またギリシャ文明においてもアリストテレスが塩水の蒸留をおこなっていますがここでもお酒を蒸留するということは行われませんでした。8世紀頃アラブ世界の天才化学者として活躍したジャービル・イブン=ハイヤーンは蒸留器を考案し他の錬金術師と共に様々な液体を蒸留しました。彼はワインを蒸留するとアルコール度数の高い液体が産まれ、さらに蒸留を繰り返し精製することによってさらに液体のアルコール度数が高まることを知っていました。そうしてアラブ世界で守られてきた叡智ははやがてヨーロッパに広がっていきました。おそらく11世紀にはヨーロッパで蒸留酒は造られたでしょう。なお、アラビア語とギリシャ語からなる、ある種の蒸留器はアランビックと呼ばれこれがアルコールの語源となりました。