スコットランド西岸沖のアイラ島にボウモア蒸溜所はあります。1779年創業というスコッチのモルト蒸溜所のなかでも古い歴史を誇り、ほとんどの蒸溜所が自前での工程を手放したピート採掘や大麦のフロアモルティングなどの伝統製法を職人たちが頑に継承しています。それはスコッチのモルトウイスキーづくりの大いなる遺産です。ボウモアモルトは、いつも海風に抱かれています。ピートも製麦工程も潮風の影響を受け、しかも第1貯蔵庫はダイレクトに海に面し、海抜0メートルに位置します。凪いだ日も嵐の日も、海という自然環境と対話しながらモルトウイスキーは熟成していく、まさに海のシングルモルトです。歴史を積み重ねた本格感、そして潮の香と甘美な気品を抱いた他のシングルモルトにはない孤高ともいえるこの香味特性は、こうしたボウモア蒸溜所の特異な立地と伝統が育んだものです。さあ、海のシングルモルトボウモアがスコッチ業界に誇る大いなる遺産とクラフトマンシップをたっぷりとご堪能いただきましょう。今回紹介のボウモア12年はドライなスモーキー感と柔らかなフルーティー感の調和が見事です。飲みやすさのなかに、個性的な潮の香が感じられるボウモアを代表する逸品と言えましょう。アイラ島東海岸のラフロイグのようなピート臭はあまり感じず、日本人好みのモルトスコッチです。
更新日時 : 2018年03月09日
カテゴリ : 世界のお酒