酒店日記

1839年、アイルランドのひとりの青年がケンタッキー州のフェアフィールドへ辿り着きました。その青年の名はヘンリー・マッケンナ。故郷アイルランドの蒸溜所で働いていた時の経験をいかし、彼は『幻のウイスキー』をつくることになります。それは1855年のことでした。ほとんどの行程がハンドメイド、だからこの当時は一日一樽にも満たなかったのです。マッケンナは質が低下することを何よりも嫌いました。深いコク、熟成感溢れたその風味は人々の評判になり、手に入りづらいこともあってか、いつしか『幻のバーボン』と呼ばれるようになりました。限定した生産、そして譲渡不能の販売許可証。アイリッシュ魂はバーボンの傑作を生んだのです。バーボンと言われるには、第1に原料となる穀物の51%以上がトウモロコシであること、第2に新品で、かつ内側を黒く焦がしたホワイト・オークの樽で2年以上熟成されていること、第3に160プルーフ以下で蒸溜、125プルーフ以下で熟成されていることです。ヘンリー・マッケンナはその条件に、さらに3つの独自の方法をとっています。一つは、酸を抑えるためにモロミを一度醗酵させ、蒸溜した後に残ったモロミを25%以上加え、72~96時間かけて醗酵させる方式、サワーマッシュ方式をとっています。二つ目は、ホワイト・オークは、直径16インチ以上に成長したものから厳選して、樹脂分の少ない秋から冬にかけて伐採し、6ケ月~1年かけて自然乾燥させます。さらにオーブンに入れ樹液を除いてから樽づくりへ。次に樽焦がし。1回約1分ほど火をいれること5回です。三つ目は風通しをよくするために、広々とした場所に熟成庫を建て、窓を大きくとります。こうしてケンタッキーの自然に抱かれ、まろやかで定評のヘンリーマッケンナを熟成させます。バーボンも旨いですね。

更新日時 : 2018年11月16日
カテゴリ : 世界のお酒

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