米国ケンタッキーは真夏の1日の平均気温が31度以上にもなり、冬は反対に0度以下を記録します。この寒暖の差が激しい地でのオーク樽貯蔵熟成管理は難しいものがあります。とくに夏は原酒の樽材を通しての呼吸も活発で熟成も早く進むため、長期にわたる香味品質維持は困難を極めます。そこで、オーク材のパワーがみなぎっている約180リットルの小さな新樽のみを使い、樽の内面をアリゲーターといわれるワニ皮を連想させるほどに焼きます。バーボン樽内面は実は焦がすというよりもカリカリに焼くのです。これによってオーク材成分の原酒への溶出も早くなり、独特のバニラ様の甘さを強く感じさせます。これによってジャパニーズやスコッチのように10年以上の歳月をかけて貯蔵しなくても、バーボンは小さな樽を使い短い年数で熟成のピークを迎えることになります。このように、厳選した最上級の原料をはじめ、仕込みから蒸溜、貯蔵までつくり手の特別な意図や思想が色濃く反映されたバーボンのことをクラフトバーボンと言います。加えてスモールバッチ(小ロット)と呼ばれる、生産数量が限定された製品でもあります。フレッド・ノー(ジム・ビームのマスターブレンダー)によると、「父(ブッカー・ノー)がビーム家主催のバーベキュー・パーティーで賓客だけに振る舞いつづけるうち、あまりにも評価が高いので製品化した」ものがブッカーズです。深く濃い琥珀色、バニラ・キャラメル・オークの厚みのある香り、高度に凝縮されたフルーツとタンニンの味わいで、リッチな余韻が長く続きます。ブッカー・ノーの最高傑作であり、クラフトバーボンの頂点に立つ逸品とされます。
更新日時 : 2016年10月07日
カテゴリ : 世界のお酒
1819年にフランス・ロワール地方のアンジェ市で、エドゥアール・ジャン・コワントローが、オレンジの乾燥果皮を水に浸漬してもどした後蒸留し、スィートオレンジ果皮を中性スピリッツに浸漬後蒸留したものを合わせた、オレンジの香味豊かな透明なリキュールつまりコアントローを作りました。コアントローは、ホワイトキュラソー(透明なオレンジを使ったリキュール)の一つです。18世紀中頃のオーストリアの女帝マリア・テレジャ(フランスの王妃マリー・アントワネットの母親)は、コーヒーカップにキュラソーを注ぎ、そこにホットコーヒーを加え、さらにホイップクリームを浮かせて、軽い小粒の飴を乗せた飲み物を好んだと言われています。おそらくこれが、日本で一般的に普及しているウインナーコーヒーの原点と思われます。コアントローとマーマレードをマグカップに入れ混ぜます。これにホットコーヒーを注いで、現代版大人のコーヒーが出来上がります。一度お召し上がりください。
更新日時 : 2016年09月23日
カテゴリ : 世界のお酒
イギリスのグレートブリテン島の西側にアイルランド島があり、英国の北東部6州を除いて、アイルランド共和国です。首都はダブリンですが、そのダブリンのボウ・ストリートの蒸留所で、1780年、ジョン・ジェムソンが蒸留を3回繰り返すことでウイスキーが理想的な仕上がりになることを発見しました。ウイスキーは、ゲール語「ウシュク・ベーハー」(命の水)に由来しますが、蒸留所内を流れるダンガーニー川の水が生命線であり、アイリッシュ産の大麦と良質の水とトウモロコシを原料として、スコッチウイスキーの蒸留が2回のところ、3回にしてよりなめらな口当たりにしたのがアイリッシュ・ウイスキージェイムソンです。アイリッシュウイスキーは、アイルランド島内で最低3年間熟成させなければなりません。ジェイムソンは、アメリカやスペインから輸入したバーボンやフォーティファイドワインの熟成に使われた古樽をカスクにして、「起こさないでください」の札を掲げて3年以上寝かせています。その間に、焦がした木やバニラ、シェリーの甘い香りを授けるわけです。なお、麦芽(モルト)を乾燥させるために、スコッチウイスキーはピート(泥炭)を使いますが、アイリッシュウイスキーは木材や石炭を使います。ピート独特の香りがフレーバーだと感じる人もいますが、日本人の多くは薬品臭がすると感じるようです。その点で言えば、アイリッシュウイスキーは、日本人好みのウイスキーと言えそうです。アイリッシュウイスキーの原点ジェイムソンをご堪能ください。
更新日時 : 2016年09月09日
カテゴリ : 世界のお酒